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人間支援ロボット研究室

移動型マニピュレーター

研究テーマ

近年,少子高齢化の進行に伴い,産業現場や介護現場に おける人手不足が深刻化しており,社会的な課題として 広く認識されるようになっている.このような状況に対 処するため,自律的に作業を遂行できるロボット技術が ますます注目されている.2013 年に経済産業省が発表し た「ロボット産業市場動向調査結果」によれば,ロボ ット市場は 2025 年に 5.3 兆円,2035 年には 9.7 兆円に達 する見込みであり,特に製造分野以外のサービス分野に おける市場拡大が著しいと予測されている.また,ネット 販売市場の急速な発展に伴い物流現場での人手不足が一 層顕著になる中,省力化や省人化を実現するための取り 組みが進められている.これを背景に,走行ロボットを活 用した配送を目指し,官民協議会を設立するとともに,法 改正を含む規制緩和についても積極的な検討を進めてい る.これらの動きから,移動ロボットは製造業のみな らず,物流,小売,介護といったさまざまな分野への導入 が加速しており,効率化やコスト削減,さらには労働力不 足の解消に大きく寄与していることが明らかである. 移動ロボットの効率的な作業遂行は,高精度な自己位 置推定技術に依存している.近年,自己位置推定技術は大 きな進化を遂げており,精度の高いセンサとアルゴリズ ムにより,ロボットは移動中でも正確に自身の位置を把 握できる.先行研究では,RGB-D カメラや Laser Range Finderを使用して,同時に位置推定を行う手法が注目さ れている.しかし,これらの方法は照明条件や動的環境に 弱く,環境が変化すると精度が低下する問題がある.近年 では,深層学習を用いた自己位置推定が提案され ており,複雑な環境でも精度向上が図られている.特に, 深層学習を活用した SLAM は,より頑健なシステムを提 供する一方,実用化にはさらなる研究が必要である. ただし,移動ロボットが直面する多様な作業環境にお いて,位置推定だけでなく,物体の正確なピッキングも重 要な課題となる.移動ロボット単体では物体の精密な把 持は難しく,特にピック&プレース作業には限界がある. 一方,カメラ付きのマニピュレータは高精度な 認識と把持操作が可能だが,作業範囲が限定されるため, 広範囲での作業には対応が難しい場合がある.高精度な 自己位置推定技術と物体把持技術を統合することは,よ り柔軟かつ効果的なロボットシステムの構築に不可欠で ある. そこで本研究では,移動ロボットとマニピュレータを 統合する「モバイルマニピュレータ」を開発した.このシ ステムには,Contrastive Learning (CL) を活用した自己位 置推定技術を導入しており,Faster R-CNN を活用した物 体認識技術と組み合わせることで,室内環境での高精度 かつ効率的なピッキング作業の実現を目標とした.

学生

  • 張 暁強
  • 実験映像